SNSをやめて読書に戻った私が『スマホ時代の哲学』に見つけた答え

SNSをやめて読書に戻った私が『スマホ時代の哲学』に見つけた答え 書評

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気づけばスマホを眺めていて、閉じたあとに残るのは「今日も何もせずに終わった」という虚無感。
そんな経験はありませんか。

『スマホ時代の哲学』は、その「なぜ」に答えてくれる一冊です。
そして読み終えたとき、私は自分が数年前にしたことの意味を、ようやく理解できた気がしました。

『スマホ時代の哲学』ってどんな本?

  • 著者:谷川嘉浩
  • 出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン(ディスカヴァー携書)
  • 副題:「常時接続の世界」で失われた孤独をめぐる冒険

タイトルの通り、スマホが当たり前になった時代に、私たちが何を失いつつあるのかを問う一冊です。

「なぜ不安や退屈をスマホで埋めてしまうのか」——

そんな問いから始まり、哲学者たちの言葉を手がかりに、失われた「孤独」を取り戻すまでを一緒に旅していくような構成になっています。

この本の核心:〈孤立〉と〈孤独〉は違う

この本を読んで、いちばん腑に落ちたのが「〈孤立〉と〈孤独〉は別のものだ」という話でした。

どちらも「ひとり」を意味する言葉に見えますが、本書では明確に区別されています。

〈孤立〉= 気を散らすものから距離をとること

スマホを手にしていると、通知が届き、SNSが目に入り、私たちの注意は絶えず分散していきます。

しかも厄介なのは、スマホを見ていないときでさえ、どこか気もそぞろになってしまうこと。

〈孤立〉とは、そうした「気を散らされる状態」から距離をとることを指します。

何かに深く集中するための、いわば土台です。

〈孤独〉= 自分自身と対話すること

一方の〈孤独〉は、もう少し内側の話です。

心静かに、自分自身と対話しながら考える——

そんな時間のことを指しています。

寂しさとしての「孤独」ではなく、自分と向き合うための、豊かな時間としての〈孤独〉。

そして、この一文に立ち止まりました


「〈孤立〉抜きに〈孤独〉は得られない」

――谷川嘉浩『スマホ時代の哲学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

つまり順番があるということです。

まず気を散らすものから離れなければ〈孤立〉、自分と向き合う時間〈孤独〉はやってこない。

言われてみれば当たり前のようで、私にはこれが静かな衝撃でした。

あのときの私がしていたのは、〈孤独〉を取り戻すことだった

実は以前、SNSやダラダラと動画を見る時間を手放して、その分を読書にあてるようにしたことがあります。

きっかけは、あの謎の虚無感でした。

スマホを閉じたあとに残る、「今日も何もせずに終わった」という感覚。

楽しかったはずなのに、なぜか満たされない。

そして本を読む時間を意識的につくるようになってから、私はあらためて読書の面白さを感じるようになりました。

それは、SNSや動画をだらだら眺めていたときには決して味わえなかった感覚です。

でも当時の私は、それがなぜなのかを説明できませんでした。

この本を読んで、ようやく分かった気がします。

あのとき私がしていたのは——

スマホから離れることで〈孤立〉をつくり、本を開くことで〈孤独〉を取り戻すこと。

「今日も何もせずに終わった」という虚無感は、たぶん自分と対話する時間がまるごと奪われていたことへの心の反応だったのだと思います。

自分がやってきたことに、あとから名前がつく。そんな読書体験は、そう多くありません。

そのときの話は『本を読まなくなった私が、また月3〜4冊読めるようになった3つの方法』の記事に書いています。

「わからない」を抱えたまま歩く力

この本には、もうひとつ心に残った考え方がありました。


ネガティヴ・ケイパビリティ——
「結論づけず、モヤモヤした状態で留めておく能力」

――谷川嘉浩『スマホ時代の哲学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

本書では自分の外側に「謎」を置き、それと繰り返し向き合うなかで自己対話が生まれると語られています。

そのとき大切なのは、謎に安易な答えを与えないこと。

把握しきれない部分を許容しながら、謎とともに過ごすこと。

自分と向き合うためには、この「わからないまま抱えておく力」が必要なのだと思います。

すべてを誰かに教えてもらうのではなく、自分で対話しながら考える時間が要る。

読書は、その練習になるのかもしれません

本書を読んでいて思い出したことがあります。

先日読んだ小説は、序盤がとにかく掴みどころのない物語でした。

これはSFなのか、それとも主人公の妄想なのか。
霧を掴むような感覚のまま、正直「うーん」と思いながらページをめくっていました。

でも読み進めるうちに、物語は少しずつ像を結んでいきました。

あのとき私がしていたのは、まさに「わからないまま抱えておく」ことだったのだと、今なら思います。

今の時代は、検索すればすぐに答えが見つかってしまいます。それは一見、明快で効率的かもしれません。

けれどそのぶん、私たちの隣にはずっと情報が付きまとう。

暇があれば、なんとなくスマホを触ってしまう。

情報が近くにありすぎて、自分と向き合う時間が極端に少なくなっている——そんなふうに感じました。

現実と空想の間の、あの曖昧な感覚を味わってみたい方は、『【第175回芥川賞】『ゾンビ回収婦』感想|元図書館司書のネタバレなしレビュー』の記事もどうぞ。

この本は、万人向けではありません

意外に思われるかもしれませんが、これは著者自身が本書の中で明言していることです。

哲学は、どんなタイミングでも、誰にとっても「必要」とされるものではない——そういう性質を持っているから、と。

本書ではエピクテトスの言葉も紹介されています。

人は病気や怪我といったトラブルを抱えたとき、それを治療するために哲学を学ぶのだ、と。

つまりこの本は、何かに躓いたときにこそ効いてくる一冊なのだと思います。

私の場合は、スマホとの距離感に違和感を覚えていた時期に、この本と出会いました。タイミングがぴったりだったからこそ、これほど深く響いたのだと思います。

逆に言えば、今まさに解決したい課題を抱えていない方には、それほど刺さらないかもしれません。

だから私は、この本を「救急箱」のような一冊としておすすめしたいと思っています。

必要になったときに、そっと手を伸ばせばいい。

「今はピンとこない」という方も、それでいいのだと思います。

本にはきっと、その人にとっての「読みどき」があるので。

こんな人におすすめ

<こんな方におすすめ>

  • 気づけばスマホを眺めていて、その時間にモヤモヤしている人
  • SNSを見たあと、なぜか疲れや虚しさを感じる人
  • 集中力が続かない、と感じている人
  • 哲学に興味はあるけれど、難しそうで手が出せずにいる人

<今は必要ないかもしれない方>

  • スマホとの距離が、すでに心地よく取れている人
  • 今の生活に、特に引っかかりを感じていない人

哲学書と聞くと身構えてしまいますが、本書は哲学の本としてはかなり噛み砕いて書かれています。

もちろん、スラスラ読み流せるタイプの本ではありません。考えながら読む時間は必要です。

それでも「難しそう」という理由だけで避けるには、もったいない一冊だと思います。

スマホの時間を、少しだけ読書に

とはいえ、「じゃあ今日から本を読もう」と思っても、すぐには習慣になりません。私もそうでした。

コツはスマホを開く手を止めることより、「本がすぐ手元にある」状態をつくること。

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まとめ

  • 〈孤立〉=気を散らすものから距離をとること
  • 〈孤独〉=自分自身と対話すること
  • そして「〈孤立〉抜きに〈孤独〉は得られない」
  • わからないことを、わからないまま抱えておく力も大切

私がSNSを手放して読書に戻ったとき、そこで取り戻していたのは〈孤独〉だったのだと、この本を読んで気づきました。

スマホは、いつでも誰かと繋がる手段をくれます。

その一方で、自分自身と過ごす時間を、静かに奪っていく。

もし「今日も何もせずに終わった」という虚無感に心当たりがあるなら——

一度スマホを置いて、本を開いてみてください。

そこにはきっと、あなただけの時間が待っています。

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