恩田陸『蜜蜂と遠雷』のあらすじと感想|クラシックを知らなくても読める小説

恩田陸『蜜蜂と遠雷』のあらすじと感想|クラシックを知らなくても読める小説 書評

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クラシックの曲は、正直ほとんど知りません。

そんな私が『蜜蜂と遠雷』を読み終えて思ったのは、「この曲を実際に聴いてみたい」ということでした。

ピアノコンクールを舞台にした小説です。
楽曲を文字だけでここまで伝えられるものなのかと驚きました。

どんな本なのか、結末に触れずにお伝えします。

『蜜蜂と遠雷』はどんな本?

  • 著者:恩田陸
  • 出版社:幻冬舎
  • 直木賞と本屋大賞をダブル受賞
  • 単行本512ページ
  • ピアノコンクールを舞台にした長編小説

『蜜蜂と遠雷』のあらすじ【ネタバレなし】

舞台は、3年に一度開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール
ここで優勝すると、音楽の世界で一気に注目される——そう言われている大会です。

物語は、4人のピアニストを中心に進みます。

栄伝亜夜、20歳。
小さい頃から天才少女と呼ばれ、コンクールに出場していました。
しかし13歳のときに母を亡くし、ピアノを弾く意味を見失ってしまいます。

マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、19歳。
名門ジュリアード音楽院に通う、優勝候補と言われる存在。

風間塵、16歳。
養蜂家の息子で、家にピアノを持っていません。
各地を移りながら、その土地の楽器を弾いてきました。

高島明石、28歳。
音大を出たあと、楽器店で働いているサラリーマン。
仕事と生活を持ちながら、出場年齢制限ギリギリで今回のコンクールに挑みます。

その他にも実力のある出場者が集まるなかで、1次・2次・3次と予選が進んでいきます。

本選を目指す彼らの競い合いと成長を描いた物語です。

読む前に気になること

クラシックを知らなくても読める?

結論から言うと、大丈夫です

正直に言うと、この本に出てきた曲を私は一つも知りませんでした。

それでも困らなかったのは、曲の書かれ方がとても細やかだからです。
どんな曲で、どう響いて、どこが難しいのか。
知識がなくても、ちゃんと伝わってきます。

また読んだことで、出てきた曲に興味を持つようになりました。

分量はどれくらい?

単行本で512ページ。
私は1冊にまとまったKindle版で読んで、だいたい1週間かかりました。

正直に言うと音楽の描写が多い分、続けて読むと少し疲れます。
一気に読み切ろうとすると、途中で息切れするかもしれません。

ただ、隙間の時間に少しずつ読むぶんには、そこまで負担になりません。

通勤中や寝る前の少しの時間。
細切れに読むほうが、むしろ合っているのだと思います。

オーケストラとピアノの共演

いちばん印象に残っているのは、本選の場面です。

予選では、ピアノ一台で奏でられる音が言葉になっていましたが、本選になるとそこにオーケストラが加わります。

出場者たちが、それぞれオーケストラを背にして弾く。
音の数が増えて、鳴り方が変わる。

文字を読んでいるはずなのに、違いまで伝わってくるのです。

本選に向けたリハーサルの場面に、こんな一文がありました。


 全員の音が宙の一点に収束し、
華やかな残響を残して消えた。

――恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)

音が集まって、ひとつになって、消えていく。

一瞬の出来事が、たった一行に濃縮されていました。

順位を競う物語のはずなのに、読み終えて印象に残ったのは勝ち負けではありません。
一人ひとりの変化そのものの方でした。

読み終えた後に楽曲を聴きたくなりました

読んでいるあいだ、ずっと思っていたことがあります。

この曲、実際はどんな音なんだろう

文字で読んだ音を、耳で実際に確かめてみたくなりました。

作中の曲を集めたCDが出ています

読み終えてから調べてみると、作中に登場する曲を集めたアルバムが出ていることを知りました。

『蜜蜂と遠雷 その音楽と世界』は2枚組。
物語に登場する楽曲が収録されていて、恩田陸さんの書き下ろし短編小説も入っているそうです。

あの場面で鳴っていたのは、こんな音だったのか。
それを確かめられるのは、読んだ人だけの楽しみだと思います。

気になる方は、ぜひ聴いてみてください。

図書館のクラシックの棚にもありました

私が司書として働いていた図書館にも『蜜蜂と遠雷』のCDがクラシックの棚に並んでいたのを覚えています。

図書館は本だけでなく、CDやDVDも置いています。

「買うほどでは……」と迷うなら、まずお近くの図書館を探してみるのも一つの方法です。

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どんな人におすすめ?

<おすすめできる人>

  • 音楽を題材にした小説を読んでみたい方
  • クラシックは詳しくないけれど、興味はあるという方
  • 登場人物の成長を、じっくり追いたい方

<合わないかもしれない方>

  • テンポよくサクサク読みたい人
  • 青春群像劇が好みじゃない人

読む時間が取れないという方へ

これだけの長さを前にすると、「読み切れるだろうか」と身構えてしまうかもしれません。

以前の記事で、忙しい人に大事なのは本の厚さより読みやすさだと書きました。

この本は長いけれど、読みにくくはありません。
1日に少しずつでも、ちゃんと進みます。

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耳で聴くという選択肢

『蜜蜂と遠雷』には、Audible版もあります。

上巻と下巻の2冊に分かれていて、朗読を担当しているのは声優の島﨑信長さんと佐倉綾音さんのお二人です。

これだけの長さなら、通勤中や家事の合間に少しずつ聴き進めるのも一つの方法だと思います。

ただ正直にお伝えしておきたいことがあります。

以前『ハンチバック』をAudibleで聴いたとき、知らない言葉が出てきても、その場で調べられないのが少し不便でした。

この小説には、クラシックの曲名がたくさん出てきます。
私はKindleで読んでいたので、知らない曲名や単語でも辞書機能を使うことで理解ができました。
しかし耳だけだと、また違う感じ方になるかもしれません。

ですが、手が離せない時に耳だけで小説が読めるのはとても便利です。
気になる方はぜひ一度体験してみてください。

実際にAudibleで聴いてみた感想は『【第169回芥川賞受賞作】『ハンチバック』をAudibleで聴いた感想』の記事で紹介しています。

まとめ

  • 直木賞と本屋大賞をダブル受賞した、ピアノコンクールの物語。
  • クラシックの知識は必要なし。楽曲の言語化がとにかく細やか。
  • 単行本で512ページ。秋の夜長にじっくり読むのがおすすめ。
  • 作中の曲を集めたCDもあり、図書館で借りられることも。

知らない曲ばかりだったのに、読み終えたら聴きたくなっていました。

本を読んで、音楽に出会う。
そんな順番があってもいいのだと思います。

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